IEMケーブルの故障の多くは、3つの原因から起こります。プラグ付近での曲げ、湿気や皮脂の線材への侵入、そして頻繁な抜き差しによるコネクタの摩耗です。ケーブルはゆるく巻き、線ではなくプラグ本体を持って抜き、乾燥した状態に保ちましょう。そうすれば、良いケーブルは何年も使えます。万一故障しても、ほとんどの不具合は修理できます。
IEMケーブルは消耗品です。毎日曲げられ、引っ張られ、汗を浴び、ポケットに押し込まれます。このガイドでは、ケーブルの手入れの方法、ケーブルが変色する理由、不具合の見分け方、そして修理する価値がある場合について解説します。
要点
- 最も故障しやすいのはプラグ内部のはんだ付け部分です。抜くときは必ずプラグ本体を持ってください。
- 緑色や黒っぽい変色は化学反応です。銀の変色は主に硫化銀、銅の緑青は主に塩基性炭酸銅です。
- Shureは、同社ヘッドホンのMMCX接続は頻繁な抜き差しを想定した設計ではないとしています。ケーブルの付け替えはできるだけ控えましょう。
- Null Audioのケーブルには1年間の保証が付き、購入から3年以内のケーブルはUSD 30またはUSD 50の定額で修理できます。
- 修理で直せるのは音の途切れや無音、コネクタの損傷です。切断されたケーブル、被覆の損傷、腐食は修理できません。
IEMケーブルが故障する原因は?
ケーブルが故障するのは、導体が切れたとき、接合部がゆるんだとき、または接点がきれいに接触しなくなったときです。こうした不具合の多くは、ケーブルが最もよく曲がるプラグ付近やY分岐から始まります。Y分岐とは、ケーブルが左右の線に分かれる部分のことです。
よくある原因は3つあります。プラグ部分で曲げを繰り返すと、細い素線が少しずつ切れていきます。湿気、汗、皮脂は、ケーブルの端や傷んだ被覆から金属に届くことがあります。そして、頻繁な抜き差しはコネクタそのものを摩耗させます。
耐久性以外にケーブルで何が変わるのかが気になる方は、リケーブルで音は変わるのか?をご覧ください。
IEMケーブルを長持ちさせる毎日の習慣
ちょっとした習慣が大きな効果を生みます。どれも費用はかかりません。
- プラグを持って抜く。線を引っ張ると、最も故障しやすいプラグ内部のはんだ付け部分に負担がかかります。
- ゆるく巻く。手のひらくらいの大きさのゆるい輪にして巻くか、オーバーアンダー巻き(8の字巻き)を使いましょう。スマートフォンや指にきつく巻きつけると鋭く曲がり、少しずつ素線が切れていきます。
- ケーブルに重さをかけない。プレーヤーやスマートフォンをケーブルでぶら下げないようにしましょう。ドアや椅子の肘掛けに引っかからないよう注意してください。
- ケースを使う。ケースはプラグを保護し、バッグの中でケーブルが押しつぶされるのを防ぎます。
- ケーブルのノイズに注意する。タッチノイズ(マイクロフォニックス)とは、ケーブルがこすれたり動いたりしたときに出るノイズのことです(Sennheiser)。

コネクタを守るには?
MMCXや2pinのソケットは多くの抜き差しに耐えるよう設計されていますが、無制限ではありません。種類ごとに摩耗の仕方が異なるため、お使いのコネクタの種類を知っておくと役立ちます。見分け方はIEMコネクタガイドと2pin、MMCX、IPX、Pentaconn Earの違いで解説しています。
MMCX
MMCXは、はめ込み式の同軸コネクタで、ソケット内で回転します。Audio-Technicaは、MMCXの既知の問題として、ゆるい、きつすぎる、回転させると音が途切れる、といった点を挙げています(Audio-Technica)。Shureは、同社のヘッドホンSRH1540とSRH1840のMMCX接続は頻繁な抜き差しを想定した設計ではないとしています(Shure)。
0.78 mm 2pin
0.78 mm 2pinコネクタは、2本のまっすぐなピンをIEM本体に差し込む方式です。プラグ本体を持ち、まっすぐ差し込み、まっすぐ引き抜いてください。毎回、印のある側を合わせましょう。片側を逆に差すと位相が反転します。
頻繁に付け替える場合
ケーブルを頻繁に付け替える場合は、FlexiPlugケーブルが便利です。ケーブル側の先端(チップ)を交換する方式なので、IEMのソケットの摩耗を抑えられます。FlexiPlugのチップには、0.78 mm 2pin、MMCX、IPX、A2DC、qdc 2pin、Pentaconn Earがあります。Pentaconn Earは、日本ディックスが多数回の抜き差しに耐える耐久性を目指して設計したコネクタです(Porta-Fi)。
ケーブルが緑色や黒っぽく変色する理由
変色は、金属と周囲の環境との化学反応です。密閉された被覆の中ではゆっくりと進みます。ただし、汗や湿気がケーブルの端や傷んだ被覆から入り込むことがあります。
銀と銅
銀の変色は主に硫化銀で、空気中の硫化水素によって生じます(カナダ保存研究所)。銅の緑青は塩基性炭酸銅で、海の近くでは塩化銅になります。なお、英語の「verdigris」は厳密には酢酸銅を指します(Wikipedia)。透明な被覆の中には、紫外線や皮脂で黄ばむものもあります。金属ごとの比較について詳しくは、銅・銀・銀メッキ銅の違いをご覧ください。
変色を遅らせるには
- 汗をかいて使ったあとは、乾いた布か軽く湿らせた布でケーブルを拭き、乾かしてから保管してください。
- 直射日光を避けた乾燥した場所に保管してください。シンガポールのような湿度の高い気候では、ケースに小さなシリカゲルを入れておくと効果的です。
- 被覆にアルコールや溶剤を使うのは避けてください。もろくなることがあります。
透明な被覆越しに見える変色は、ほとんどが見た目だけの問題です。プラグまで達して接触不良を起こした場合は問題になります。
IEMケーブルの不具合の見分け方
ほとんどの不具合は、ノイズや片側の無音として現れます。下の表で、症状から考えられる原因を確認してください。
| 症状 | 考えられる原因 | 試すこと |
|---|---|---|
| ケーブルを動かすと音が途切れる、またはガリガリとノイズが出る | 素線の断線や接合部のゆるみ(多くはプラグ付近かY分岐) | 両端を少しずつ曲げて箇所を特定し、修理を依頼する |
| IEM本体側のコネクタに触れたときだけノイズが出る | MMCXのはめ込み部分の摩耗、または2pinの差し込みのゆるみ | コネクタを差し直す。別のケーブルで試す |
| 片側の音が小さい、または聴こえない | 導体の断線、またはプラグが奥まで差し込まれていない | 両方のプラグを奥までしっかり差し込む。別の再生機器で試す |
| 音が薄く、こもったように聴こえ、中央の定位がぼやける | 片側の2pinプラグが逆向きに差し込まれ、極性が反転している | 印のある側が合うよう、そのプラグを差し直す |
| 折れ癖やつぶれた部分がある | 押しつぶしによる損傷、またはきつい巻き方 | 線が露出していないか確認し、露出していれば使用を中止する |
ケーブルの故障と決める前に、別のIEMやプレーヤーで試してください。プラグの接点を乾いた布で拭き、両方のコネクタを差し直しましょう。ケーブルを替えても不具合がついてくるなら、原因はケーブルです。
修理するか、買い替えるか?
Null Audioのケーブルには、素材と製造上の欠陥に対する1年間の保証が付きます。保証は譲渡可能です。また、購入から3年以内の製品については、当店のケーブルを定額で修理します。
- USD 30:Lune、Arete、Ethos(Ethos Ultraを含む)、Aoraki、Epsilon、Hakone、Istana、Moebius、Thera、Tiburon。
- USD 50:Symphonymシリーズ。
- 定額修理の対象外:CapriとBrevity。
修理できるもの・できないもの
音の途切れや無音、コネクタの損傷は修理できます。切断されたケーブル、絶縁被覆が損傷したケーブル、腐食したケーブルは修理できません。損傷した部分を取り除くため、修理でケーブルが少し短くなることがあります。修理は通常4週間以内に完了します。詳しくは保証のページをご覧ください。
修理の依頼方法
注文番号と、不具合の説明または写真を添えてsupport@null-audio.comまでメールでご連絡ください。シンガポールでは、76 Playfair Roadのスタジオに直接お持ち込みいただくこともできます。電話やWhatsAppでのお問い合わせも受け付けています。
長持ちするケーブルづくり
Null Audioのケーブルはすべて、2008年からケーブルをつくり続けているシンガポールのスタジオでハンドメイドしています。製作と修理を同じスタジオで行っているため、修理から得た知見をケーブルづくりに生かしています。

- Ethos Ultra(最低価格 USD 89)は、強度を高めるためケブラー芯を中心に構成しています。プレーヤー側は着脱式で、3.5 mm、4.4 mm、USB-C DACのプラグが付属します。
- Moebiusもケブラー芯を使い、TPEと厚手のナイロンスリーブで仕上げています。
- Istanaは酸化と腐食を防ぐよう設計されたグラフェンコーティングを施し、70本の素線を使った24 AWGです。
- Epsilon MKIIIは、ケーブル全体で504本の素線を、黄ばみにくい黒色のスリーブで覆っています。
- Brevity Pro(最低価格 USD 49)は、26 AWGの銅線4本を、巻き癖のつきにくい柔らかなTPEで包んでいます。
ケーブルについてのご相談
IEMケーブルに不具合がある場合は、まず上記の確認を行い、修理のご依頼はお問い合わせください。買い替えの時期であれば、IEMケーブル検索でお使いのIEMに合うコネクタを調べられます。400機種以上を掲載しています。IEM・ヘッドホンケーブルの一覧もご覧いただけます。
よくある質問
IEMケーブルが緑色に変色するのはなぜですか?
銅は湿気や空気と反応して緑青を生じます。緑青は主に塩基性炭酸銅で、海の近くでは塩化銅になります。汗や湿気は、ケーブルの端や傷んだ被覆から金属に届くことがあります。透明な被覆越しに見える変色は、プラグまで達していなければ、ほとんどが見た目だけの問題です。
IEMケーブルを動かすとガリガリとノイズが出るのはなぜですか?
ケーブルを動かしたときのノイズや音の途切れは、通常は素線の断線か接合部のゆるみが原因で、多くはプラグ付近かY分岐で起きます。IEM本体側のコネクタに触れたときだけノイズが出る場合は、MMCXのはめ込み部分の摩耗か、2pinの差し込みのゆるみが考えられます。別のIEMやプレーヤーで試して確認してください。
IEMケーブルはどう巻けばよいですか?
手のひらくらいの大きさのゆるい輪にして巻くか、オーバーアンダー巻き(8の字巻き)を使いましょう。スマートフォンや指にきつく巻きつけるのは避けてください。鋭い曲がりは、内部の細い素線を少しずつ切ってしまいます。
切れたIEMケーブルは修理できますか?
Null Audioでは、切断されたケーブル、絶縁被覆が損傷したケーブル、腐食したケーブルは修理できません。音の途切れや無音、コネクタの損傷は通常修理できます。損傷した部分を取り除くため、修理でケーブルが少し短くなることがあります。
Null Audioのケーブル修理はいくらかかりますか?
購入から3年以内のケーブルの定額修理は、Lune、Arete、Ethos、Aoraki、Epsilon、Hakone、Istana、Moebius、Thera、TiburonがUSD 30、SymphonymシリーズがUSD 50です。CapriとBrevityは定額修理の対象外です。修理は通常4週間以内に完了します。
IEMケーブルはどう掃除すればよいですか?
汗をかいて使ったあとは、乾いた布か軽く湿らせた布で拭き、乾かしてから保管してください。アルコールや溶剤は被覆をもろくすることがあるため避けてください。直射日光を避けた乾燥した場所に保管し、湿度の高い気候ではシリカゲルを入れておきましょう。
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